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金沢美術工芸大学 横川 善正教授著 「ホスピスが美術館になる日」

在宅医療看護『ホスピスが美術館になる日』(ミネルヴァ書 房、2010年)


 社会の進歩、合理 化、効率化を掲げた性急な近代化への批判的継承のなかで歩みだしたポスト・モダン社会にたいする指針を、ホ スピスと美術館が重なる部分をとおして提示する。前著のなかで述べた「ターミナルアートの時代」の内容を、英国の終末医療の現場や日本でのホスピスや知的障害者施設の取材をもとに発展させた。現在、金沢市立病院と連携しておこなっている「ホ スピタリティアート・プロジェクト」は、芸術をはじめとする今日の制度化された「近代」枠組みを相対化し、美術教育の現場に必要な新しい芸術観や具体的な創作の可能性を引き出す試みである。


 医療と芸術の両者をつなぐ共通のテ–マは、生活の質と生命の尊厳への意識を、個人と社会がいかにして高め、互いに「創ってゆく」という点に収斂するものと考える。19世紀のアートは絵画が、20世紀のアートはデザインが、そして21世紀のアートはケアが牽引するという観点から、医療と 芸術の近接の歴史的必然性に言及した。


- こ のごろ「医学は科学ではなくアートであるべき」と、知り合いの医療関係者からよく聞かされる。こちらとしては「お任せください、ご希望にお応えしましょう」とゆきたいところだが、そのたびに、ある種のうしろめたさと同時に歯がゆさを感じてしまう。なぜかといえば、医学に劣らず芸術もまた、これまでたっぷりと「科学」を染み込ませており、というよりむしろ、 都合のよい部分だけをちゃっかりいただいておきながら、いざ肝心のところとなると、科学者には解らない独特の世界を創っているの一点張りで、あとは作品をみれば解るでしょうの逃げ口上を繰り返してきたからである。P.51


- ひとが何を発想するかは、その立ち位置が「ギリギリ」であるかどうかによって決まる。限界を感じるちからは、あたらしい何 かを嗅ぎ取り、そのために何かを捨てることと同居する。なかんずく、アートの前衛に立とうとする者に、後戻りのできないことを受入れる喜びと潔さがなければ、創ることはおろか壊すことさえできない。漫然とそこに立って傍観しているだけではなにもうまれない。つねに追い詰められる自分を感じつつ、しかもあえてその果てへと追い込むことでしか、創造は活気しないのである。P.50

- 増殖し氾濫する情報とモノ、あまりにも刺激的で動画化したヴィジュアル社会にあって、この時かぎりの動きを捉えようとする ひとの「視力」が落ちてしまったようだ。コンピュータグラフィックのおかげで、もはやこの世にない世界と、いまだこの世にない世界を同時に楽しめるようになった。しかし、これによって現在があっという間に過去に吸収され、しかも現在が未来 を先取りしすぎるため、本当の「今」が見えなくなってしまった。競うように配信される3D映像が鮮明でまばゆく、刺激的であればあるほど、これらの画像と動画を凌ぐだけの「動体視力」が育たなくなる。アートの世界に引き当てていえば、これは変幻万化する生の現実から永遠の今を捉える「(なま)素描力」が痩せている証拠なのである。 (ドローイング)


・ ・・ アニメの「罪」なところは、動かなくてもよいところまで実際に動くようにして見せたこ とで、世の中のもの全体が思ったように動かないことに耐えられなくなり、ものごとが 「止まる」ことに苛立つようにしてしまったことである。漫画から動画への移行は、人間 の想像力の質を変えただけでなく、その寿命を縮めたことにならなければいいが。P.266

横川 善正教授 経歴

  • 横川善正(よこ がわ よしまさ)
  • 金沢美術工芸 大学教授
  • 専門分野:  英国文芸・デザイン論 
    • 近年はホスピスにおけるアートの果たす役割りについて調査、発表
  • 経歴
  • 昭和24年(1949) 金沢市出身
  • 昭和49年(1974)   金沢大学大学院文学研究科修士課程英米文学専攻修了  金沢医科大学教養部助手
  • 昭和52年(1977) 金沢美術工芸大学一般教育講師
  • 昭和53年(1978) 文部省長期在外研究員として英国エディンバラ大学研修 
  • 平成 7年(1995) 金沢美術工芸大学 教授(英語、デザイン論、英国文芸史)
  • 現在        金沢美術 工芸大学名誉教授、所属 一般教育等     
  • C.R. マッキントッシュ・ソサエ ティ会員(グラスゴー本部)
  • アート・ミーツ・ケア学会理事
  • 金沢市立病院との連携事業「ホスピタリティアート・プロジェクト」監修
  • 済生会金沢病院の「サイセイカイ・ナデシコ・アートプロジェクト」(SNAP)の監修
  • 著 書
  • 平成22年(2010)「ホスピスが美術館になる日-ケアの時代とアートの未来」ミネルヴァ書房
  •           23年度、泉鏡花記念金沢市民文学賞受賞
  • 平成17年(2005) 『誰 も知らないイタリアの小さなホスピス』岩 波書店
  • 平成13年(2001) 『スコットランド、石と水の国』岩波書店
  • 平成10年(1998) 『ティー ルームの誕生、<美覚のデザイ ナーたち>』平凡社                    
  • 平成6年(1994) 『マッキントッシュ、建築 家として芸術家として』(訳)鹿島出版会
  • 平成3年(1991) 『マッ キントッシュ、インテリア・アーティスト―芸術空間としての家具 』 (訳)芳賀書店




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